私、今から詐欺師になります

「そうか。
 迷わないよう、ちゃんと乗り物に乗せてやれ」
と言うと、

「乗り物って……子供扱いだね」
と笑う。

 確かに。
 よちよち歩きの子供を見ているようで、目が離せない。

 そんなこちらの表情を見、
「なに渋い顔してんの?」
と玲は笑う。

「いや、あいつ、実は、手練(てだれ)の詐欺師なんじゃないかと思って」

「お兄ちゃんが人に振り回されるのって、珍しいもんね」

 じゃあ、姫を送ってくるよ、と手を挙げ、玲は出て行った。

 振り回されてるか。

 そうかもな。

 ……今から、茂野のところに帰るのか。

 まあ、他に帰るところないしな。

「社員寮でも作るかな……」

 玲が聞いたら、お兄ちゃん、こういうことに関しては、的が外れてるよね、と言いそうなことを呟いていた。