私、今から詐欺師になります

「いえ、信じられないです。
 ハンコ押したり、パソコン打ったりするだけで、こんなにお金がいただけるなんて」

「もう一度言うが、五千円だぞ。
 お前のハンカチ一枚買えるかどうかの金額だ」

「ハンカチは買えますよー」
と茅野は笑った。

「そうか?
 全身高そうなんだが。

 お前の身ぐるみ剥がしたら、車一台買えそうだぞ」

「そうなんですか?

 知りません。
 時計もなにも秀行さんが勝手に買ってくるので」

「それ、茂野の好みなのか。
 意外に趣味がいいな」

 上品で良く似合っている、と褒めてくれた。

「ありがとうございます」
と言いながら、せっかく褒めてもらったけど、秀行さんには伝えられないな、と思っていた。

 それにしても、今の言い方はちょっと気になる。

 秀行は結構センスはいい。
 なのに、意外に趣味がいい、と穂積はわざわざ付け足した。

 微妙に敵意を感じるな、と思っていた。

 まあ、同種の会社でフロアの上と下、しかも同年代だからな。

 秀行の方は絶対、穂積を嫌ってそうだ、と思う。