私、今から詐欺師になります

 



「どうだ。
 一日泣かないで働けたか」

 社長室に入ると、穂積がそんなことを言ってくる。

「はい、社長っ。
 ありがとうございますっ」
としゃちこばると、穂積は微妙な顔をした。

「……人が居ないときは、穂積でいい」

「では、穂積さんっ。
 ありがとうございますっ」

「なにかいろいろ言いたいことはあるが、まあ、いいか」

 そう言いながら、穂積は茅野を手招きする。

 はいっ、と近くに行くと、茶色い封筒を渡してくれた。

「今日の日給だ」

「ありがとうございますっ」

 いつまで勤めるかわからないと思っているからか、何故か茅野だけ、日給制の即日払いだった。

「わーい。
 働いてお金もらっちゃいましたよ。

 たいして役に立たないのに、こんなにもらってしまってすみません」
と謝ると、

「いや、予想外に役に立ってるし。
 それ、五千円だぞ」
と穂積は言う。