私、今から詐欺師になります

 俺に早朝起こされて、眠いとか。
 今度ランチ食べに行こうねとか。

 ……しかし、相変わらず、男らしい短さだな、こいつのメール。

 自分に対してだけ短いわけではないらしいと思い、少しほっとする。

 なにを打っても、
『はーい(⌒∇⌒)』
 くらいしか返ってこないので、本当に愛がないんじゃないのかと心配していたのだが。

 いや。
 愛がないのはわかっている。

 それでも、三年も一緒に暮らしたのだ。

 夫婦としての情くらいあると信じたかった。

「ありがとう。
 すまなかったな」
と言いながら、自分の鞄にそれを放る。

「いえ。
 早くに見つかってよかったです」

「ところで、誰がこれを拾ってくれたんだ?」

 礼がしたいんだが、と言うと、
「いや、それが特に名乗らなかったみたいで。
 このビルに勤めてる誰かみたいなんですけど。

 特に特徴もないオッサンだったらしいですよ」
と省吾は言ってきた。