おやびんっ、捕獲してきましたっ、という勢いで、秀行の許に省吾が持ってきたのは、茅野ではなく、茅野の携帯だった。
「そうか。
携帯が落ちてたのか」
それを受け取った秀行は中を開けてみる。
いじっていると、
「いいんですか?
奥さんの携帯勝手に見て」
と苦笑いして、省吾が言ってくる。
「いいだろう。
落としたことに気づいてもいなかったようだし。
ロックもかけてない。
あまり使わないし、見られてもなんとも思っていない証拠だ」
なるほど、昨日の昼以降、使った形跡はない。
実際のところ、使われていなかったのは、茅野が働いていたからと、疲れて爆睡していたからだったのだが、そのときは、そのことに気づかなかった。
基本、間抜けな妻に心の何処かで、安心している部分があったからだろう。
新しい番号の登録はないようだな。
友達とのメールの内容も相変わらずしょうもない。



