私、今から詐欺師になります

 



 うーん。
 奈良坂さんも悪くないんだけどなあ、と働きバチのようにすごい勢いで、社長の許に戻っていく省吾を見送りながら、佐緒里は思っていた。

 玲さんの美しい顔を眺めたあとじゃ、ちょっとね、と思う。

 美しい男は好きだ。

 女装などしていれば、より一層。

 しかも、玲と古島社長はどうやら、兄弟らしい。

 なんて美しい兄弟。

 どうして、あの二人、付き合ってないのかしら、と二人に言ったら、意味がわからないんだが、と言われそうなことを佐緒里は思っていた。

 今の携帯は、どうやら、茂野社長の奥さんのもののようだった。

 美しいものが好きなので、茂野社長も好きだ。

 省吾のことも嫌いではないが、とりあえず、玲の言いつけを破ることはない。

 だって、手を掴まれて、よろしくねって微笑みかけられちゃったからーっ。

「佐緒里さん、佐緒里さん」
と横から後輩の子が呼びかけてきていた。