私、今から詐欺師になります

 それにしても、このくらい機転が利くのなら、本当にその辺の男を引っ掛けて、七億くらい軽く貢がせられそうなんだけど。

 そんなことを考えながら、行こうとしたとき、茅野の打っている画面が目について、ん? と思った。

「あのー、茅野ちゃん。
 その表、もしかして、自分で計算して、此処、打ち込んでる?」

「あ、はい」
と手を止めて茅野は言った。

「それ、此処から計算式引っ張ってきたら、全部自動で数量入るから」
と教えてやると、数字打ち込んでみた茅野は、

「本当だ!
 玲さん、すごいですねっ」
と感激する。

「いやあの……初歩の初歩だよね、こんなの」

「そうなんですか。
 私、実は、こういうコンピュータ、あんまり使ったことなくて」

「え?」

「Windowsとか、あまり使ったことがないんですよ」

「じゃあ、茅野ちゃんちは、Macなの?」

「いいえ。
 家ではパソコン使わないですし。

 仕事で使ってたのは、Windowsでも、Macでもないですよ」
と茅野は微笑む。