まあ、どのみち、月末には辞めるつもりだったのだが。
穂積が、
「茅野……お前、結局、俺より茂野を選んだのか」
と訊いてくる。
「そっ、そんなことありませんっ。
私は穂積さん以外に好きになった人など居ませんっ。
だからこそ、ちゃんとはっきりさせないままに貴方とは居られないと思ったんですっ」
「そんなぬるいこと言ってたら、お前は死ぬまで、籠の鳥だっ」
「……そうかもしれません。
でも、ちょっと思ってしまったんです。
私が此処から出て行ったら。
悪魔みたいな人でしたけど、それでも、夫だった人です」
いつの間にか過去形で語っている自分に茅野は気づいてはいなかった。
「あの人が此処でひとりで膝を抱えて丸まってるかと思ったら、なんだか出て行けなくなってしまったんです。
扉の向こうに、夢見ていた王子様が居るってわかってても、それを振り捨てて出て行くなんて」
「じゃあ、王子はのたれ死んでもいいのかっ」
と言いながら、穂積が小さなトイレの窓を叩く。
穂積が、
「茅野……お前、結局、俺より茂野を選んだのか」
と訊いてくる。
「そっ、そんなことありませんっ。
私は穂積さん以外に好きになった人など居ませんっ。
だからこそ、ちゃんとはっきりさせないままに貴方とは居られないと思ったんですっ」
「そんなぬるいこと言ってたら、お前は死ぬまで、籠の鳥だっ」
「……そうかもしれません。
でも、ちょっと思ってしまったんです。
私が此処から出て行ったら。
悪魔みたいな人でしたけど、それでも、夫だった人です」
いつの間にか過去形で語っている自分に茅野は気づいてはいなかった。
「あの人が此処でひとりで膝を抱えて丸まってるかと思ったら、なんだか出て行けなくなってしまったんです。
扉の向こうに、夢見ていた王子様が居るってわかってても、それを振り捨てて出て行くなんて」
「じゃあ、王子はのたれ死んでもいいのかっ」
と言いながら、穂積が小さなトイレの窓を叩く。



