「帰ったか、茅野」
昨夜、家に戻ると、もう秀行は帰っていた。
「今日は遅いんじゃなかったんですか?」
ダイニングの椅子に座っていた秀行は新聞を置いて立ち上がり言う。
「……残念ながら、古島穂積のお陰で、随分順調に交渉が進んでるんでな」
「そうなんですか?」
「だが、帰って来たら、妻は古島と浮気中」
「してません。
ちゃんと帰ってきたじゃないですか。
それに、私、しばらく穂積さんとは会いません」
「なんでだ?」
「貴方と離婚するまで、会わないと決めたんです」
「……穂積に貢いでもらわずに、どうやって俺と離婚する気だ」
「こっ、これがありますっ」
と茅野は鞄から買い集めた宝くじを扇のように広げて出した。
黙って見下ろしていた秀行が、突然、ぺしっ、と茅野の手の甲をはたいた。
宝くじが吹っ飛んでいく。
「ああっ!?
なにするんですかっ」
と振り向き、慌ててかき集めている後ろから、
「阿呆か……」
と言われる。



