私、今から詐欺師になります

「……しかも、目覚まし、かけ忘れやがったんだ。
 もうすぐ来るだろ」
と言い、省吾の顔の前に手を出し、自分でボタンを押して扉を閉めていた。

「はあ。
 忘れそうですね、茅野さん」
と横でぼそりと佐緒里が言うのが聞こえた。

「すまないが、上に連絡しておいてくれ。
 ちょっと出てくる」

「あ、はい、わかりました」
とちらとこちらを見たあとで、佐緒里は穂積の会社に電話をかけ始めた。

 目覚ましをかけ忘れたって。

 完璧主義の茂野がそんなこと、茅野任せにしているとは思えないが。

 幾つも目覚ましはかけているはずだ。

 自分もそうしているから。

 穂積は急いで駐車場に行き、車に乗り込んだ。