私、今から詐欺師になります






 翌日、早めに出社した穂積は、茅野のくれた飴をデスクで眺めていた。

 茅野の熱で少し溶けている。

 何個か舐めたが、結局、もったいなくて取っていた。

 中高生か、俺は、と自分で思ってしまう。

「おはよう」
と玲が現れた。

「ねえ、今日、茅野ちゃん来ないの?」

「来ると思うが」

 あんなことを言ってはいたが。

 まだ辞める準備もしていないのに、途中で仕事を投げ出したりする女ではないから、しばらくは来るだろうと思っていた。

「遅くない?」
と言われて気づく。

 そういえば、いつもならもう出社している時間だ。

 茅野にしては遅すぎる。

 仲のいい受付嬢とでも話しているのだろうかと思ったが、一度も此処に顔を出さずにそんなことをする茅野ではない。

「ねえ、昨日、なんかあった?」
と玲が訊いてきた。