私、今から詐欺師になります

「私は……穂積さんが好きです。
 だから、これ以上、詐欺は続けられません」

 このところ、ずっと考えていたことを口にすると、
「……やっぱり、詐欺師なんて名乗る奴はロクなもんじゃなかったな」
と穂積は笑う。

 穂積を見つめ、茅野はちょっとだけ笑って言ってみた。

「私、結婚はしてましたが、恋をしたのは初めてです」

「お前……よくそんなクサイ台詞を平然と。
 実は俺をもてあそんでるんじゃないのか?」

 穂積が眉をひそめて見せる。

 二人でちょっと笑ってしまった。

「なってみたかったです。
 女詐欺師とか。

 男の方をもてあそぶ悪い女とか。

 ……そしたら、きっと。

 今、こんなに悩まなくてよかったから」

 茅野の手首をつかんだまま、穂積が口づけてくる。

 少し離れた穂積が囁いた。

「今日は泊まっていけ」