私、今から詐欺師になります

「茂野がお前に店なんて出させるわけないだろ。
 さっきみたいな男が、いつ言い寄ってくるのかわからないのに」

 側のソファに座った穂積が、茅野の腕を引く。

 よろけた茅野は、うっかり穂積の膝の上に乗ってしまった。

「あっ、すっ、すみませんっ」
と真っ赤になって、立ち上がろうとした茅野の腕を穂積はつかむ。

「いいから、ちょっとじっとしとけ」
と言う穂積が元気がないように見えて、おとなしく膝に座ったまま、その顔を見つめてしまう。

 そのまま黙っている穂積に茅野は言った。

「……穂積さん、なにか悩みがあるのなら、おっしゃってください。
 私でよければ、どん、とすがって来てください。

 どんっ、と」
と胸を叩いてみたが、顔を出す上げた穂積に、

「阿呆か」
と笑われる。

 なんでだろうな。
 罵られてても好きなんだけど、穂積さんの顔が。

 そして、その表情が。

 だが、
「……俺の悩みはお前だ」
と手首をつかまれる。