相変わらず、落ち着く夜景だな、と思いながら、茅野は穂積の部屋から海を眺めていた。
「珈琲でいいか?」
と穂積が訊いてくるので、
「あっ。
今日こそ、私にやらせてくださいっ。
私、実は、珈琲淹れるの上手いらしいんですよ」
会社では、専用の機械があるので、穂積に自分で淹れてあげられることはないので、そう主張してみた。
「上手いらしいって言うのはなんだ?」
「いえ、秀行さんがいつも……」
今、秀行の話題を出すのはちょっとな、と思いながらも、一度、口に出してしまった以上、引っ込めるのもまずいか、と思い、最後まで口にする。
「いつも珈琲だけは間違いなく美味しいと言ってくださって。
店でも出せそうなくらいだと」
あ、と茅野は手を打つ。
「穂積さんの会社をクビになったら、小さなお店とかやってみようかなと今、思ったんですけど。
そして、二号店、三号店って出して、いずれ、全国に展開して、七億とか儲けるんですっ」
と言うと、
「……なにいきなりチェーン展開目論んでるんだ」
実は大胆な奴だな、と言われる。



