私、今から詐欺師になります

 さ……寒い。
 この中でジェラートを食べろとか。

 昼間は暖かかったので、比較的薄着だった茅野は既に充分凍えていた。

 もしや、これは、阿呆なことばかり言う私に風邪をひかせて、殺そうという、計画殺人!

 などと思いながら、ジェラートを凝視していると、

「また暇なことを考えてるだろ」
ともれなく言われ、うっ、と詰まる。

「いいから、食べろ」
とこちらを見て、穂積が笑う。

 ひどいことを言われている気がするのだが。

 この顔で言われたら、目の前の崖からソリで滑って降りろと言われても逆らえないな、と思いながら、可愛い木製の使い捨てスプーンで鮮やかな色合いのジェラートをすくい、一口食べた。

「つめたっ。
 美味しいっ」
と同時に感じたふたつの感想を口に出す。

 穂積もそれに付き合うようにジェラートを食べ始めた。

「あっ。
 穂積さんっ。

 風邪、ぶり返しますよ」
と言ったが、

「いいんだ。
 この状況で、お前にだけ食べさせたら、鬼だろ」
と言う。