「なにか今日は元気がなかったな」

 イタリアンの店で、海鮮のリゾットを食べて、二人で近くの公園を歩いていた。

「いえ、そんなことないですっ」
と慌てて言うと、

「風邪が移ったか?」
と穂積が訊いてくる。

「いえ、そんな」

「まあ、移るようなこともしてないしな」
と言われ、どきりとしてしまう。

「此処は高台だし、寒いか?」
と訊かれた。

「ちょっと。
 あ、穂積さん、風邪ひいてるから、よくないですよね」
と言うと、

「いや、俺が来ようと言ったんだから」
と言った穂積は、もう少し上に行こうか、と言ってくる。

「前、仕事で、この上の道を通ったとき、夜景が綺麗だったんだ」
と言われ、見上げる。

 小高い山のようになっているそこを少し上がったところに、何台か車を止められる場所があって、東屋のようなものがあった。

 そこを眺めながら、茅野は、
「……あそこは嫌です」
と言う。

 なんでだ? と穂積に訊かれ、かなり迷ってその言葉を口にした。