私、今から詐欺師になります

「いや、貴方がたの企画書は問題ないが、会社にちょっと不安があったんですがね。

 でも、そうですか。

 あの古島社長と親しくしてらっしゃるとは意外ですね」

 悔しいが、効率を追い求める自分と違って、簡単に人も仕事も切ったりしない古島穂積の方が信用があるのは知っている。

 省吾がその話に乗っかるように、穂積との親しさを強調する。

「この間、茂野が入院してるときに、お見舞いに来てくださったお礼を言ってたんです」

 こら、省吾、と思ったが、
「そうなんですか」
と言った部長が笑うのを初めて見た。

 今までどちらかと言うと、攻撃的だったのに。

 穂積や茅野、玲でも、簡単にこの部長を笑わせられそうなのに。

 自分が人付き合いが苦手なことはわかっている。

 それは穂積も同じ感じがしていたのだが。

 滲み出す雰囲気と実績だろうかな、と思う。

 他人に害を与えない実績。

 まあ、自分から最も被害を被っているのは、茅野だろうが。