私、今から詐欺師になります

「社長、玲さんは、女装してただけで、オカマでもオネエでもないし。

 今はすごい格好いい男の人ですよ。

 長年、男やってた僕なんかよりずっと」

「……なに瞳をキラキラさせて、心酔してんだ、お前は」

 思わず、溜息をついてしまう。

 妻は朴念仁そうな兄に、部下はオカマの弟に憧れるとか、と思ったとき、まさに、その二体の困った生物が正面から来た。

 穂積の方が先に気づいてこちらを見る。

 なんと言ったものかと思い、
「……元気そうだな」
と言ってしまう。

「ああ、ぼちぼちよくなった。
 お前も元気そうだな。

 ああ、茅野から快気内祝いをもらった」

 ありがとう、と礼を言われる。

「茅野が用意して配ってるんだ。
 俺はよく知らん。

 まあ、お前も水分とって、気をつけろ」

 あれは本当に激痛だった、と穂積が同い年だったと思い出し、忠告してみた。