私、今から詐欺師になります

「いや。
 玲さんはいい方だとか茅野が言っていたから」

 それを聞いた玲は笑う。

「さすがだね、茅野ちゃん。
 ナイス解釈だよ。

 僕がただ慰めてると思ったんだね」

 それはそれでちょっとムカつくけど、と言いながら、他に誰も居ないエレベーターで玲は書類を下ろし、言ってきた。

「僕が君を奪ってあげるって言ったんだよ。
 人のいいおにいちゃんじゃ、茂野から君を奪うなんて出来ないだろうからって。

 ……なに? 文句ある?

 今のままのこう着状態じゃ、人のいい茅野ちゃんは、そのうち、茂野に引きずられて、また家にこもっちゃうよ。

 だから、とりあえず、僕が外に引っ張り出してあげようって言ってるんじゃない。

 僕はおにいちゃんと違って、悪い奴だからね」

 そう玲が言い終えたとき、ちょうど、エレベーターが一階についた。

 扉が開くと、よく見る秋本とか言う受付の女子がそこに居た。

 玲に気づいて、
「玲様っ、おはようございますっ。
 またお会いしましたねーっ」
とテンション高く挨拶してくる。