「茂野も病人かもしれないが、俺も病人だ。
いたわる気持ちはないのか?」
穂積は、そう脅すように言ってしまった。
自分でもなに言ってんだ……と呆れながら。
だが、なんだかわからないが、必死さは伝わったようで、
「わかりました」
と茅野は真剣な顔で言ってくれる。
もしかしたら、本当に風邪が辛くて誰かに居て欲しいだけだと思ったのかもしれない。
……滑稽だ、とそんな自分のことを思っていた。
茅野に会うまで、自分がこんな間の抜けた奴だとは思っていなかった。
それにしても、玲はなにを言ったんだろうな。
茅野と別れて、社長室に戻りながら思う。
『玲さんって、とてもいい方ですね』
いい方……。
まあ、憎めない奴だが、我が弟ながら、なかなかしたたかな奴なのだが。
またなにかをいいように解釈して、親切だと思ったのかな、と思う。



