私、今から詐欺師になります

 



「茅野ちゃん、それ、今日中じゃなくていいから」

 ノートパソコンの画面を見ている茅野の肩を叩いて、玲が言うと、
「終わりました」
と茅野は言う。

 は? と訊き返した。

「終わりました。
 打ち終わって確認して、そこに分類してあります」
と空いている隣りのデスクを指差す。

 結構な量あったはずだけど、とそちらを横目に見たあとで、
「で、あんた、なにやってんの?」
と訊くと、

「いえ、お茶でも淹れましょうかと言ったんですが。
 みなさん、遠慮なさったので、することもなく。

 ちょっとこのPCから入れるネットワークに入って確認してたんですが。

 すごい簡単に入れますよ、此処の……」

 とんでもない画面を茅野は開いていた。

「あ、あんた、なにやってんのよっ。
 あんた、産業スパイ?」

 思わず叫ぶと、みんながこちらを振り向く。

「ああいえ、たまたま開いたんです、これ」

「それっ、たまたま開かないからっ」
とマウスを横から奪って、そのページを閉めた。