『一度始めたことは最後までやれ。
 俺は途中で投げ出す奴は嫌いだ』

 うん。
 いい言葉だ、と改めて眺めた茅野は思う。

 OPACを作り替えているとき、理想としている使いやすい形にならなくて、何度か行き詰まったことがある。

 本来の業務からは外れていたので、出来るだけ、休み時間や自宅に帰ってからやるようにしていた。

 昼休み、お弁当を食べたあと、パソコンを開いたまま、ぼんやりしていたら、

 そんなことしなくても。
 多少の使いづらさも図書館という場所の醍醐味だとか言っていた古参の職員の人が缶コーヒーをポン、とデスクに置いてくれた――。

「ありがとうございます」
と茅野は深々と頭を下げる。

「あ、そうだ。
 忘れるとこでした」
と強烈な漢方薬の匂いがするが、とてもよく効くのど飴をポケットから出して、穂積のデスクに置いた。

「ポケット入れてたので、熱で溶けちゃったかもしれませんけどね」
と笑って行こうとすると、立ち上がった穂積に、腕をつかまれた。

 なんとなく抵抗してしまう。