「茂野。
リンゴとナイフとナイフとナイフだ」
「だから、なんで、そこを三回繰り返すっ」
途中で寄った果物屋で買ったリンゴと果物ナイフの入ったビニール袋を穂積は秀行に差し出した。
「じゃあ、俺は帰る」
「えっ。
穂積さん、なにか食べて行かれませんか?」
それか、お茶でも、と言うと、
「いい。
俺も病人だから、今日は早めに帰って寝る」
と言う。
戻って急いで仕事をするようだ。
「お忙しいのに、すみませんでした。
あの、大丈夫ですか?
診察とかしていかれませんか?」
「たいした風邪じゃない。
じゃあな、茅野」
と頭をたたいて、出て行った。
「見送ってきます」
「見送らなくていい」
と即座に言ってくる秀行を振り返り、ぴしゃりと言う。



