私、今から詐欺師になります

 



 家に着いた茅野は、入院の手引きのような紙を見ながら、せっせと荷物を詰めていた。

 歯ブラシ、コップに、箸、スプーン。

 それに着替えか。

「あ、穂積さん、お茶でも淹れますから、その辺に座っててください」
とリビングのソファを勧める。

 穂積が所在なげに、辺りを見回していたからだ。

「すみません。
 すぐそろえますから、荷物」
と言って奥に入る。

 戻ってくると、穂積はローテーブルの上の写真立てを見ていた。

 あっ、それはっ、と赤くなる。

 結婚式の写真だった。

「別人のようだな」

「そ、それは美容師さんがやってくださったので」

「綺麗だが、今の方が若く見えるな」

「髪、ひっつめてるし、眉が細いからですかね?
 いつもと違う感じになってます」

「大人の女に見えるぞ」

 どういう意味かな……?

 穂積は、左半分に写っている秀行については触れなかった。