「穂積ー。
あの子、なに?」
ドアを開け、日高玲(れい)が言ってきた。
部屋に戻るなり、仕事を再開していた穂積は言う。
「茅野はどうした?」
お前に任せると言ったろう、と言うと、
「なにが出来るかわからないから、とりあえず、どうでもいい書類打たせてる」
と肩をすくめて見せる。
「まあ、なんだかわからないが、二、三日、様子を見てやってくれ」
とノートパソコンの画面を見ながら穂積は言った。
「ねえ、あの子、なんなの?」
「さっき、エレベーターで拾った。
父親の事業が失敗して、急に大金がいるようになったんだそうだ」
と適当な作り話をする。
「はあ、それで、七億ね」
「七億?」
思わず訊き返す。
「七億いるんだって、あのお嬢ちゃん言ってたわよ」



