私、今から詐欺師になります

 


 
 無駄に広い特別室のソファで、茅野は、入院に必要な書類に書き込んでいた。

 秀行はもう随分と落ち着いていて、点滴をされながら、うとうとしている。

 誰かがノックしたので、出て行くと、穂積だった。

 秀行を振り返ると、眠りそうになっていたので、そうっと部屋を出た。

「荷物取りに帰るんだろう?
 乗せていこう」

「ありがとうございます。
 さっき秀行さんのご家族も来られたんですけど。

 もう帰っていかれたので、今の方がいいですかね?」

 秀行が寝ている間に、さっと行ってきた方がよさそうだ、と思う。

 また、一人にするとうるさいから。

「待ってください。
 すぐに支度しますから」
と言うと、

「茅野」
と後ろから声がした。

 扉を開け、
「あれ? 起きてたんですか?」
と戸口からは死角になっているベッドの方に行く。

「何処に行く」