なんで秀行に従っているんだろうと思っていたら、いつか、
『僕じゃあ、言えないようなことを言って、やれないようなことをやってくれるんで、見ててスカッとするんです』
と言っていた。
おのれでは実現できないことをやってくれる悪の大王に憧れているようだった。
「じゃあ、僕、ちょっと戻ってスケジュール調整とかして来ます。
社長、さっさと石出してくださいよ。
お大事に」
じゃあ、と行こうとする省吾にもう一度礼を言おうと、車椅子から手を離すと、秀行が、
「手を離すなっ、茅野っ」
とわめいてくる。
「坂道じゃないんですから、いきなり転がっていかないですよ」
と呆れて言うと、
「ちょっとでも、茅野さんに離れて欲しくないんですよ、心細いから」
と笑った省吾はまた、秀行に怒鳴られ、こちらを向いて小声で言う。
「茅野さん、実は、ざまーみろ、とか思ってません?」
ははは、と笑って答えなかったので、今度は茅野が怒鳴られた。
『僕じゃあ、言えないようなことを言って、やれないようなことをやってくれるんで、見ててスカッとするんです』
と言っていた。
おのれでは実現できないことをやってくれる悪の大王に憧れているようだった。
「じゃあ、僕、ちょっと戻ってスケジュール調整とかして来ます。
社長、さっさと石出してくださいよ。
お大事に」
じゃあ、と行こうとする省吾にもう一度礼を言おうと、車椅子から手を離すと、秀行が、
「手を離すなっ、茅野っ」
とわめいてくる。
「坂道じゃないんですから、いきなり転がっていかないですよ」
と呆れて言うと、
「ちょっとでも、茅野さんに離れて欲しくないんですよ、心細いから」
と笑った省吾はまた、秀行に怒鳴られ、こちらを向いて小声で言う。
「茅野さん、実は、ざまーみろ、とか思ってません?」
ははは、と笑って答えなかったので、今度は茅野が怒鳴られた。



