私、今から詐欺師になります

「人間ドックに入るたびに書かれてたんですよ。
 石ができかかってるから水分取るようにって」

 昨日、テーブルに寄りかかるようにして、じっとしていた秀行の姿を思い出す。

 前兆的に腰でも痛んでいたのだろう。

 横で聞いていた八重島がなにか思い出したように嫌そうな顔をする。

 経験者のようだ。

「痛い。
 あれは痛いよ。

 出産の痛みって言うもんね」

 早く来い、茅野ーっ。
 来ないと殺すぞっ、と叫んでいる秀行の声が聞こえていた。

 ……よく怒鳴る元気があるなあ。

 行く気を無くしそうだ、と思いながら、省吾に搬送先を訊いて切る。

「すみません。
 病院へ来い、と奈良坂さんの後ろでわめていたので、帰ってもいいですか?

 書類は持ち出してもよければ、病院でノートパソコンででも打ちますが」
と言うと、いい、いい、急がないから、とみんなに言われた。

「そういえば、確か、秀行さんのお父様もこのくらいの年で尿路結石になられたそうで。
 親子って似るんですね」
と言ったとき、騒ぎを聞きつけ、穂積がやってきた。