私、今から詐欺師になります

「お気持ちはありがたいんだが……」

 何故、俺が茂野の家で看病されなきゃいけないんだ、と言ってくる。

「落ち着かなくて、病気が悪化するだろうが」
と言いながら、声が出づらいらしく、穂積が咳払いしたとき、玲がドアの向こうから呼んできた。

「茅野ちゃん、電話ー」

 はいはい、と言って、
「では、ご無理されませんように。
 なにかあったら、すぐにおっしゃってください」
と早口で言い、茅野は自分のデスクに戻った。

「携帯鳴ってるよー」

「ああ、はい」
と古い携帯を開いた茅野は、

「あら、奈良坂さん」
と言う。

 珍しいな。
 っていうか、真下に居るのに、なんでわざわざかけてきたんだろ、と出ると、
『茅野さんですかっ?』
と慌てた声がする。

『すぐ来てくださいっ』
と言うが、何処に? と思った。

 だが、省吾の後ろで大きな音がしている。

 救急車の音だ。