私、今から詐欺師になります

「玲様っ。
 おはようございますっ。

 今のはただの思い出話ですっ」
と佐緒里のテンションが上がる。

「玲司」
と玲が言い直す。

「おはようございます、玲司さん」

 茅野も極力、穂積のオフィス以外では、玲司と呼ぶようにしているのだが、やっぱり癖が抜けずに玲と呼んでしまう。

 まあ、玲司のニックネームとして、玲さん、でもいいのだが。

 玲は一応、女の玲と男の玲司を別人にしたいようだから。

 ……また玲に戻ることも考えてだろうかな、と思う。

 まあ、私ももう一度、女の玲さんに会いたい気もする、とか思っていると、
「おはようゴザイマス」
と前の方から声が聞こえた。

 大きな人たちに囲まれて、いまいち見えなかった省吾だ。

「あら、奈良坂さん、おはようございます」

「おはようございます」

「ああ、居たのか。
 おはよう」

「なんか三人ともどうでもよさそうな挨拶ですね……」
と言われて笑う。

 そういうわけではないが。

 確かに、玲に対する挨拶とは、かなりの落差があるようだ。

 秋本さんが……と苦笑いした。