私、今から詐欺師になります

 



 穂積の会社はなんと秀行の会社の真上のフロアを占めていた。

 穂積に連れられ、社内に入る。

 中の造りも似たような感じだ。

 どうも似たような業種のようだった。

 男性社員とすぐ側のデスクで話していたショートヘアの美女が、顔を上げ、こちらを見た。

「あら、社長。
 お帰りなさい。

 あれ?
 その人誰ですか?」

 秘書らしき麗しいその美女は茅野を見るなり、そう問うてきた。

「さっきそこで拾った結婚詐欺師だ」

「は?」

「ややや、やめてくださいっ」
と茅野は穂積の袖を引く。

「金に困ってるようだ。
 お前、手が足りないと言ってたろ。

 なんだったら、使ってやってくれ」

「えー、この人をですか?」
と言う彼女は、不満そうだ。

「使えるんですか?」
「さあ?」

 上から下までジロジロ見たあとで、
「美人だから、受付にでも座らせといたらどうですか?」
と素っ気なく言ってくる。