「どうしてですか?」
と茅野は不思議そうな顔をする。

 ひとりが寂しいから食べて行けというのに、そんな断り方をしたからだろう。

「茅野ちゃん、ひとりのときは、あんまり男を家に誘わない方がいいよ」

「いや、だって、玲さんじゃないですか」
と笑おうとする茅野の細い肩をつかみ、その唇にそっと触れた。

 茅野がとんで逃げ、門柱にぶつかる。

 その仕草が、何処か小動物じみでいて、笑ってしまう。

「なんで逃げてんの?
 僕なら大丈夫じゃなかったの?」

「い、いえ、だってなんだか……」
と茅野は赤くなって言う。

「ありがとう。
 ちゃんと男として見てくれて。

 おやすみ。
 今日は帰るよ。

 今、密室で二人きりになって、襲わない自信ないから」

 じゃあね、といつものように軽く手を挙げる。