私、今から詐欺師になります

「よし、実家に行こう」
と秀行がいきなり言い出した。

 えっ、と固まった茅野を見て、
「俺の実家じゃない。
 お前の実家にだ」
と秀行は言う。

「いっ、嫌ですーっ」
と茅野が訴えている。

「また貴方の御威光を私に見せつける気ですねっ」

 そこで、こちらを見て、
「我が家の秀行さんへの歓待ぶりったらないんですよ」
と言ってくる。

「じゃあ、しばらくうちへ住め。
 俺の実家で二、三ヶ月過ごしたら、離婚しようなんて気は失せるさ」

 会ったこともないのに、秀行そっくりな母親が頭に浮かんだ。

 美しいが何事にも厳しそうな母親。

 二、三ヶ月で、洗脳されて、ロボットのように従順な妻になる茅野を連想してしまう。

 同じ性格でも、異性より同性の方が破壊力がありそうだからな、と思った。

 穂積はつい、
「茅野、うちは姑は居ないぞ」
と自分でもよくわからないアピールを始めてしまう。

「両親共に居ない。
 再婚して、わりとすぐに亡くなったからな」

 なんとなく、当時を思い出してしまう。