私、今から詐欺師になります

「えっ?
 嫌ですっ。

 まだ帰れませんっ。
 七億稼ぐまではっ」

「だから、何年かかるんだ、それ」

「……三百八十四年後?」

 茅野と穂積と玲が同時に言った。

「でもっ、残業したときは、少し多めにいただけますよ?」
と茅野が言っても仕方の無いようなことを訴えている。

 だが、何故かちょっと嬉しそうだ。

 自分でお金を稼ぐということに充足感を感じているようだった。

 そのことがわかっているように、秀行が言い聞かせるように言う。

「茅野。
 お前は久しぶりの外の世界が楽しいだけだ。

 この男もただ、目新しいイケメンだから気になってるだけだ」

 そう穂積を指差し、切って捨てる。

「古島が気になるのなら、今此処で、古島に好きだと言ってもらえ。
 それで終わりだ」

「それなら、もう言っていただきました。

 ……あれっ?

 言っていただきましたよね?」
と確認するように、茅野はこちらを見る。

 いや、自分でもよく思い出せない。

 茅野と居るときはいつも、らしくもなく、熱に浮かされたようになっているから。