お使いかあ。
なんか働いてるって感じだな、と鼻歌混じりにエレベーターに乗った茅野だったが、すぐにその表情は凍った。
次のフロアで、秀行が乗ってきたからだ。
「オ……オハヨウゴザイマス」
此処では一社員と他所の会社の社長サマだからな、と思い、硬い口調で挨拶をし、頭を下げた。
秀行は、
「おはよう」
と素っ気なく言い、階数ボタンの前に立つ。
見覚えの無い服を着ているせいかもしれない。
穂積が買ってくれた分以外にも、昼休みに玲に見立ててもらって、何枚か買ったのだ。
運悪く誰も乗って来ず、気まずい沈黙が続く。
「昨日……」
と茅野が覚悟を決めて、口を開いたとき、チン、と軽い音がして、エレベーターの扉が開いた。
「おお、着いたな」
と同じ一階で秀行は降りようとする。
明らかに、目を合わせず逃げようとする気配に、思わず、その肩をつかんで叫んでいた。
「昨日、約束破りましたねーっ。
なにもしないと言ったのにっ」
「爆睡してたお前が悪いだろうっ」



