私、今から詐欺師になります

 幾つか突っ込みたいことがある。

 とりあえず、何処のどなたか存じませんが、結婚してくださいってのは、おかしいだろう。

 だが、彼女はこんなに真っ直ぐ自分を見つめてきた人間は居ないと思われる視線で、自分を見つめている。

 その長い髪と同じ真っ黒な瞳には、エレベーターの明かりと自分だけが映って輝いていた。

 だからだろうか。

 催眠術にはまったように、
「……はい」
と言ってしまっていた。

 恐ろしい女だ……。