秀行に指差されたエレベーターに茅野は、とぼとぼと向かっていた。

 なんだかまた、上手くはぐらかされてしまったな、と思いながら。

 いつもこうなんだよな~。
 離婚のことに限らず、と思いながら、溜息をつく。

 三階にあるバスセンターからバスに乗って帰ろう、と思って、素直にエレベーターのボタンを押そうとしたら、誰かが先に押した。

 指先が触れて、
「あ、すみません」
と顔を上げる。

 わあ、と思う。

 なんか凄いイケメンが真横に居たからだ。

 秀行くらい身長があるが、彼よりも体格がいい。

 秀行さんが何処か薄っぺらい感じがするのは、顔が整いすぎてるからかと思ってたけど、この人は全然そんなことないな、と秀行に殴られそうなことを思いながら、その顔を眺める。

 整った顔よりも、意志の強そうな目許の方が印象的だ。

「おい」
とよく響くいい声がすぐ側でした。

「おい、俺の顔になにかついてるのか?」

 話しかけられているのが自分だとは一瞬、思わなかった。

 なんだか、雑誌かポスターでも眺めている気分で見ていたからだ。