中山くんに見惚れてましたなんて言えるわけない…
まさか謝られるなんて思わなかった。
こんな時、なんて返せば良いのだろう。
なんて返せば今後、気まずい思いをせずに過ごせるのだろう。
気の利いた言葉が思いつかなくて
「私の方こそごめん、勝手に怒ったりして」
思っている気持ちをそのまま伝えることしかできなかった。
それなのに。
「西野って面白いな」
彼から返ってきたのは意外な言葉。
「転校してきた日は大丈夫かってくらいブルブル震えてたのに、いつの間にか山下と仲良く笑ってて、それなのに俺の前では敬語で話しだすし、挙げ句の果てに急に怒って帰ってしまった」
中山くんの言葉がひとつひとつ胸に刺さる。
でも、それはズキズキした痛みではなく、むしろ心地よい。

