「…やっぱり、これ返すね…貸してくれてありがとう」
突然キレたことに負い目を感じたからなのか、それとも2人きりの教室に異様に緊張したからか、絞り出した声は少し震えていた。
「…おう」
思いの外、すんなり受け取ってくれた中山くん。
本当は「中山くんのおかげで点数よかったんだよー」とか「この前はごめんねー」
と話を続けた方がもっと距離は近づくんだろうけど、それより今はこの緊張感から逃れたいって思いが強くて、
「…それじゃ」
わたしの心は、足は
教室の戸、廊下の方に向かっていた。
その時、
「西野」
中山くんがわたしを呼び止めたんだ。

