階段を駆け上がって、教室の戸を開ける。


誰もいない教室



だと思っていたのに、そこにいたのは机に顔を伏せている中山くん。




「…あ」



思わず漏らした声に合わせたように顔を上げた中山くんとまたしても目が合ってしまう…。





「えっと、ゼッケン取りに来たの…」




聞かれてもないのに答えてしまったのは


目が合った気まずさを誤魔化したかったから。




「…そっ」



短いけれど中山くんから返事がきたことになぜか安心し、わたしは中山くんの隣の席、自分の席に向かい、カバンを開けゼッケンを探す。



あった。




あ、このノート。

中山くんから借りたノート、返すなら今…かな。
誰かに見られたら、中山くん迷惑だよね、きっと。


ゼッケンと一緒に取り出したノートをわたしは中山くんに差し出した。