「《自分の限界は超えるな》」
陽が落ちた見晴台で、外灯の光が青いパーカーを鮮やかに映し出す。
私に背を向け、彼は眼下の遊具やモニュメントに向けて宣言しているようだった。あるいは、自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。
「《自分の可能性を信じろ!》」
言い終わってから、彼は「あれ」と首をひねる。
「ふた言になっちゃったな。ま、いっか」
次の瞬間、彼は正面に向かって飛んだ。
「え――」
見晴らし台は二階以上の高さがある。いくら下が土だからといっても、芝生と違って踏み固められた地面はそれなりに硬度があるはずだ。死ぬことはなくても、着地時に身体が受ける衝撃は足の骨を砕くくらいの威力があるかもしれない。
とっさに下を覗き込むと、彼は着地と同時に前方に跳ねるように回転した。まるでボールがワンバウンドするみたいな動きだ。そしてそのまま立ち上がった。どこかに怪我をした様子はなく、こちらを振り仰いで大きく手を振る。
「じゃあね、ミズホちゃん」
にっと笑った白い歯が、暗闇に浮き上がる。勢いをつけて走り出した彼は影となり、階段の手すりや石塀を軽やかに飛び越して公園から出て行った。
気が抜けて、私はその場にへたりこむ。
風がざわざわと周囲の木々を揺らしている。
外灯が照らすだけの見晴台にひとりでうずくまっていたら、なぜだか無性に、笑いたくなった。



