さよなら、世界



 私のほうをちらっと見やる彼女は、やっぱり魅力的な目鼻立ちをしている。私はゼリー飲料に触れた。見ず知らずの人にもらったそれは、なんとなく手をつけられず机に入れたままだ。

 黒目が大きくて、サルというよりは犬に近かった男の人の顔を思い返す。それなのに、名前に馬がつくのがまたおかしい。

 二年生ならみんな顔があるのかと思ったけれど、彼の友人には顔がなかったし、登下校中も全校集会でも穴顔が並んでいたから、おそらく学年は関係ない。

 川崎家の人以外では、彼と、そして彼女だけが特別なのだ。

 マリは先生の話をほとんど聞いていない。人生にはもっと大切なことがあるというふうにノートに何やら細かい文字を書き込んでいるかと思えば、机に突っ伏して堂々と寝ていることもある。それでも不思議と注意されることはない。

 高校は義務教育じゃないから、やる気のない生徒は置いていかれるだけなのかもしれない。

 顔のある人とない人の違いは、何なのだろう。