さよなら、世界



「わ、ちょっと」

 彼女は驚いたように肩を動かし、僕の手から逃れようとする。

「だって、手を引っ張って引きずり出したら、顔から地面に落ちるよ。ちょ、暴れんなって」

「くすぐったい!」

 不意に、ずるりと彼女の身体が落ちてきた。まともにのしかかった人ひとりの重みは、貧弱な僕には想像以上に荷の重いものだった。

「うわ!」

 ふたりで地面に倒れ込む。土の香りに混じって、ほの甘い香りが鼻腔をつく。うつ伏せに落ちてきた彼女が掛け布団のように僕に重なっている。

「いたたた」

 彼女が呻きながら起き上がり、「大丈夫?」と僕の顔を覗き込む。凛とした瞳に見つめられ胸が高鳴りそうだが、背中の痛みでそれどころじゃなかった。

「なんとかね……」

 顔をしかめながら身を起こす。目を上げると、彼女が生えていた場所で窓がぽっかりと口をあけていた。

「で、いったいなんの遊びをしてたんだよ」

 背中をさすっている僕に、彼女が目を剥く。

「これが遊んでるように見える!?」

 きれいな顔にばかり気を取られていたからわからなかったが、彼女はずいぶん汚れた格好をしていた。正確に言うと水浸しだった。主に胸あたりから下半身にかけて、水滴がしたたるほどに濡れている。

 彼女は胸のまえでこぶしをグッと握り締めた。

「これはね、闘いなの!」