頭上で緑が芽吹くほど、足元は桜色に染まる。散った花びらが土の地面に積もって、日陰に溶けのこった雪みたいだった。
季節の変わり目は体調を崩しやすい。そんな教訓を折り目正しくなぞった僕は、入学式に合わせて風邪を引き、肺炎になりかかって入院した。つまり、大事な高校生活のスタートラインで、見事につまずいたわけだ。
教室に遅れて登場したせいで身体の弱い大人しそうなヤツ、という印象を持たれてしまい、幸か不幸かクラスで目立たない存在になってしまった。高校生になって二週間、友達もいない。
最初に失敗すると、その後のモチベーションは下がる一方で、僕はすっかり遅刻常習犯になっていた。といっても出席確認のときにぎりぎり教室に滑り込む程度の遅刻とも呼べないかわいい遅れだけど。
朝、いつもどおりの時間に母親に起こされ、食卓に用意された朝食をのんびり食べ、のろのろと登校すると、必ずといっていいほど校門が閉鎖されている。
この高校では遅刻を取り締まるため、決められた時間になると教員がわざわざ校門を閉めることになっている。締め出された生徒は通用口に門番のように立つ生徒指導の鬼教師から一喝され、クラスと名前を言わされた。おまけに遅刻した生徒には居残り掃除のペナルティが課される。
そんな馬鹿げた仕組みに素直に従うつもりはないので、僕はいつもひと気のない校舎の裏側から敷地に入り込んでいた。腰まであるコンクリートの土台に足をかけ、緑色のフェンスをよじ登る。錆び付いてギシギシ揺れるが、標準よりやや細身の僕なら壊れる心配はなさそうだった。



