さよなら、世界


「あーわかった! 娘に彼氏なんてまだ早い! みたいなアレか。妹に近づく男は許さねえ! って感じ?」

「ばっ」

 遊馬がたたみかけるように言って、七都が赤くなった。私と目が合うと「知るか、勝手にしろ」と洗濯物を持ったまま二階に上がってしまう。

「お兄ちゃんぶりたいお年頃だね」

 ソファの上であぐらをかきながら、遊馬はくっくっと肩を揺らす。

 いろいろとお世話になった彼には、私のことを話してあった。七都と異母兄妹であることも、理香子さんと和解したことも。全部をぜんぶ話したわけではないけれど、遊馬の私を見る目は、少しも変わらない。

「さて、邪魔者もいなくなったことだし」

 ぴょんとソファから下り立ち、彼はキッチンカウンターの向こうに立つ。楽しそうに崩れる表情は、いつも私を安心させる。

「瑞穂ちゃんさ、パルクールやらない? 本格的に」

「え……」

「兄貴のサークル、今度新しく募集かけるからさ」

 女の子も結構やってるんだよ、と言って、彼は目を輝かせる。

「瑞穂ちゃん、素質あると思うよ。真面目だし、飲み込みも早いし。それに――」

 すっと目を細めて、遊馬は楽しげに微笑んだ。

「飛びたいんでしょ?」

 私はちょっと笑ってしまった。

「もう飛べたんだけどね」

 遊馬のおかげで。七都のおかげで。私が信じたいと願った人たちのおかげで。

「やってみようかな」

「ほんと?」


「うん。もっと高いところから、飛んでみたいから――」