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夏休みに突入し、環境がすこし変化した。
理香子さんが父親の赴任先についていくことになったのだ。彼女はまだ情緒が安定していない。しばらく私から離れて過ごしたほうがお互いのためにいいだろうと、雪春さんが提案したのだった。
何ヶ月後か、あるいは何年後になるかはわからないけれど、雪春さんたちが戻ってくるまで、私たちは別々に生活することになる。そして私は理香子さんが使っていた一階の和室を自室としてあてがわれることになった。
一軒家は正直広すぎるけど、しばらくは兄妹ふたりで家事を手分けしながら暮らしていくことになりそうだ。
「へえ、年頃の男女が同じ家でねえ……大丈夫なわけ?」
ソファに寝転がった倉田遊馬がつまらなそうに言う。と、背後から現れた七都が背もたれを蹴っ飛ばした。
「ていうか、なんでコイツが人んちのソファでリラックスしてんだよ」
取り込んだばかりの洗濯物を両手に抱えながら遊馬を睨みつける七都に、私はキッチンから答える。
「うちに来たいっていうから、呼んだんだけど……」
「おいふざけんな。勝手に呼ぶなよ。つか、こいつは家に入れるな」
「ちょっと川崎くんさー、先輩に対する口の利き方がなってなくない?」
眉間に皺を寄せる七都と、頬をひくつかせている遊馬。このふたり、よっぽど合わないらしい。
でも確か、七都は先輩を褒めてたはずなんだけどな、と思った。
『あいつ、見てる世界が違うっていうか。そういう奴のそばにいると、なにか変わりそうだし』
そう言って、遊馬を評価していたのに。
ソファの先輩がごろりと寝返りを打った。
「ていうか川崎くん、なんでそんなにイラついてんの? もしかして、嫉妬?」
七都の顔色が変わった。
「はあ? なに言って」



