彼女の後ろを歩く男子生徒や横を通り過ぎていく女子生徒、視界に入るすべての生徒たちに顔がある。
胸をじんと痺れさせたのは、紛れもない喜びだ。大声で叫びたい衝動をぐっとこらえる。
世界が、戻ってきた。
「渡辺さんて、川崎くんのいとこなんだってね」
「ああ、うん……」
ヘアピンの彼女はやっぱり同じクラスだったらしい。並んで教室に向かいながら、私はさりげなく尋ねる。
「まだ……好きなの?」
興味を持てば、一気にひらける。
『彼女』が言ったとおり、世界は鮮やかだった。
私の質問で、ヘアピンの女の子はぼっと頬を燃やした。
七都との噂が立ったとき、放課後の告白が敗れたとき、彼女がどんな表情をしているのか、強い関心を持ったことを覚えている。
そんな彼女は、照れた顔のまま唇を突き出した。
「まあ、そうだけど。でも誤解しないで。川崎くんの情報欲しさに渡辺さんに近づいたわけじゃないから」
意志の強そうな目をきらきらさせて、彼女は言った。
「ずっと気になってたんだ。渡辺さんいつもひとりで平気そうな顔してるし。変な子……じゃなくて、変わった子だなって。話したいと思ってた」
よく動く表情が、とてもまぶしい。
「変な子って!」
つられるようにして私は笑った。
高校に入学して以来ずっと固まってた顔の筋肉が、はじめてほどけたみたいだった。



