「え、いいけど……」
「瑞穂ちゃん今日もお弁当でしょ? いい場所あるんだ。行こう」
「うん……」
私は教室に入って机の横にぶら下げたランチバッグを腕に抱えた。MIZUHOと名前をかたどったキーホルダーがバッグの取っ手で慌ただしく揺らめく。廊下に戻ると、彼女が手ぶらで待っていた。
「あれ、お弁当は?」
「あるよ」
スカートの横をぽんと叩く。
「え、ポケットに入ってるの?」
「うん。じゃ、行こっか」
彼女はいきなり廊下の窓枠に右足をかけた。おそるべき足の長さだ。って、驚くのはそこじゃない。
「な、何してんの」
「ランチにいい場所、ここが近道だから」
「いやいやいや、そこ道じゃないから!」
窓から裏庭に出ようとする彼女を必死に押しとどめる。通りかかった生徒たちが、何事かと私を見ていく。恥ずかしくて耳まで熱くなった。
「渡辺さんてば――」
彼女の腰に回そうとした腕が、空振りをする。スカートがふわりと風を孕んで、彼女の白い太ももがあらわになる。芝生の上に着地した彼女が振り向いて笑みを広げた。
その瞬間、脳内に閃光が走って、世界が真っ白になった。



