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穴顔――目鼻がない穴のあいた顔のことを、そう呼ぶことにした――も、見慣れればかわいいものかもしれない。
笑っているのか怒っているのか、それとも泣いているのか、感情はまるでわからないけれど、少なくとも、みんな揃って般若の面相をしているよりはよかったと思う。
廊下の壁に寄りかかりながら、携帯を見るフリをして行き交う生徒を眺めていると、不思議と愛着が湧いてきた。
同じ顔の人間が足早に教室へ急いだり、あちこちで談笑したりする様子は、人間の日常を浮き彫りにする。それはたとえるなら、透明なケースの中で巣作りに勤しむ蟻の生態を観察することに似ていた。
「ねえ、五時間目、自習だって!」
甲高い声に目を向けると、となりの教室から数人の生徒グループが出てくるところだった。服装と体型から察するに女子生徒が四人と男子生徒が三人、その真ん中に、見慣れた顔がいる。
白い歯を見せて笑う川崎七都は、いわゆる人気者だ。男子からも女子からも好かれて、勉強も運動もトップクラスだし、見た目も申し分ない。
家では目を合わすたびに睨まれるけれど、学校では目が合ったとしても鋭い目つきを向けられることはない。興味も関心もないように、そっと目を逸らされるだけだ。
「見てるねぇ!」
真近で響いた声に、飛び上がりそうになる。振り向くと、前髪ぱっつんのクラスメイトがにこにこ笑っていた。



