私のことを恥ずかしく思っているのか、理香子さんは私をあまり外に出したがらない。花火にでかけるなんて、バレたときのことを思うと足がすくむけれど、何もしないで留まっているだけでは、私は一生どこにも行けない。
「一番いいのは、学校の集まりに出かけたって説明することだな。居残り補習をさせられてることにするか」
「え」
「あーでも、夜の九時近くまで居残るのは無理があるよな……この際、文化祭の実行委員で話し合いが長引いたとか」
「私、実行委員じゃないけど」
「馬鹿、ふりだよ、ふり」
要領悪いなお前、と言われて、私はふたたびムッとする。
「なんで、そんなに協力的なの? チャラいって言ってた遊馬と出かけるのに」
携帯から目を上げて、彼は私を見た。不機嫌そうな顔をしているだろうと思ったのに、思いがけず真剣な表情が見えて、私は口をつぐむ。
「知らなかったから」
かたんと乾いた音がする。七都がテーブルに置いた携帯が、メッセージを受信したのか光っている。
「あいつ、有名らしいな。なんとかってスポーツやってるって」
「パルクール?」
「ああそれ。仲間があいつのこと知ってて。あいつの兄貴ってのが世界大会で上位に入賞したとかなんとか」
「へえ、そうなんだ。それは知らなかった」
自分のお兄さんのことを師匠だと言っていた遊馬を思い出した。お兄さんが友人と立ち上げたパルクール・サークルに、彼は子どもの頃から参加していたらしい。
「べつに変な奴じゃないって聞いたから」
その言葉に、隠れた優しさが見えた。あのとき、やっぱり七都は私が遊馬から絡まれてると心配して、助けてくれたのだ。
「なんかあいつ、見てる世界が違うっていうか。そういう奴のそばにいると、なにか変わりそうだし」
倉田遊馬が周囲にいい影響を与える人間だと、七都は考え直したらしい。実際に、私は遊馬からどれだけ勇気をもらったかわからない。彼の前向きな姿勢は、七都にもいい影響を与えてくれるかもしれないと思った。



